お酒造りって蔵人がひとりで黙々と仕込んでいるといったイメージがありませんか?
でも、「蟻」という焼酎に触れてみて感じたのは、そこに関わる“人のつながり”の存在でした。
原料を育てる農家さん、仕込みを担う蔵人、運ぶ人、売る人、そして飲む人まで。
この焼酎には、ひとりではできない「みんなで進むものづくり」の姿勢が詰まっています。
第4話では、「蟻」がどのように人と人の連携によって生まれているのか、そして、それがどんなふうに焼酎の味わいに影響しているのかを掘り下げていきます。
一杯の焼酎に込められた「みんなの手」
焼酎造りというと、蔵人が黙々と作業する姿を思い浮かべる人も多いかもしれません。
でも実際には、それだけではありません。
黄金千貫を育てる農家、設備や資材を支える取引先、物流を担う業者、酒販店や飲食店。
「蟻」の焼酎が、誰かの手元に届くまでには、多くの人の力が重なっています。
たとえば、原料となるさつまいも。
神川酒造では、信頼する契約農家と連携しながら黄金千貫を育てています。
年ごとに異なる気候や土壌の変化を見極めながら、蔵が求める品質に合わせて栽培される芋は、
まさに“共につくる”焼酎の土台です。
仕込みを担う蔵人たちもまた、日々小さな変化に目を凝らしながら作業を重ねています。
効率やスピードよりも、丁寧で確かな仕込みを重視する姿勢が、焼酎の滋味へとつながっています。
静けさのなかにある連携
焼酎造りの現場には、独特の静けさがあると聞きます。
蒸気に包まれた蔵の中で、仕込みの音や香りに五感を研ぎ澄ませながら、
職人たちは目の前の原料と対話するように作業を重ねていく。
その光景は一見、孤独な営みにも見えるかもしれません。
けれど、そこには目に見えない連携があります。
農家が育てた芋、設備を調整する職人、焼酎を届ける人たち──
たくさんの“誰か”の想いと作業が、この一杯に込められている。
「いつもの晩酌に、少しほっとできる一杯を届けたい」
そんな願いが、どこかに込められているのではないかと感じさせられます。
“みんなで進む”という選択
蟻たちは群れをなして進みます。
ひとりでは行けない距離も、互いに支え合うことで確実に前へ進む。
この姿は、神川酒造のものづくりにも重なります。
大量生産や目立つプロモーションに頼るのではなく、
「自分たちに合ったやり方」で、目の届く範囲を大切にする姿勢。
原料や仕込みへの向き合い方、取引先との関係性にしても、
人と人との信頼が土台になっています。
時間をかけて築かれてきたこの関係性が、
「蟻」という焼酎の、じわじわと広がる信頼にもつながっているのだと思います。
焼酎づくりは、人と向き合う姿勢にも通じる
原料に敬意を払い、日々の状態に目を配り、手をかけることを惜しまない。
その積み重ねによって、焼酎が育っていくというスタイルは、
どこか“人との向き合い方”にも似ています。
相手の変化を見落とさず、無理に変えようとせず、
ちょうどいいタイミングを待ち、見極める。
この蔵での仕込みには、そんな“寄り添う姿勢”が自然に息づいているのかもしれません。
そしてその空気感は、飲み手にもじんわりと伝わってくるような気がします。
「蟻」という名前には、協調と連携の哲学が宿っています。
それを実践するように、この焼酎は日々つくられているのだと感じます。
ひとりで抱えなくてもいいと思える瞬間
私たちは、日々の暮らしのなかで「自分ひとりで頑張らなきゃ」と思うことがあります。
でも、「蟻」の焼酎に触れると、少しだけ考え方がやわらぎます。
見えないところで、自分を支えてくれている誰かがいる。
そう思えたとき、背負っていたものが少し軽くなる。
この焼酎には、そんな“気づき”を静かに与えてくれる力があります。
ひとりでは届かなかった場所に、仲間とならたどり着ける。
そんな歩みを、「蟻」という名の焼酎は、今日も続けています。