【第3話】蟻は念う。小さくても、大きい夢と志を持てばよい。

麦焼酎って、どちらかというと軽やかで、飲みやすいお酒。
そんなイメージを持っていた私にとって、「蟻 麦」との出会いは、ちょっとした発見でした。

まろやかでコクがあるのに、飲み疲れしない。飲み終えたあとに、静かに余韻が残る──そんな麦焼酎だったんです。

今回は「蟻 麦」という一本を通して、麦焼酎の新しい魅力や、神川酒造ならではの焼酎づくりの姿勢をご紹介していきます。

「麦焼酎ってこういうものだと思ってた」そんな方にこそ、読んでいただきたい内容です。


麦の繊細さを、誠実に引き出す仕込み

「蟻 麦」は、「蟻 芋」と並ぶ、神川酒造のもうひとつの代表作です。

原料には、厳選された大麦と麦麹。
仕込みに使われるのは、大隅半島の高隈山系から湧き出る伏流水。
そして工程のすべてが、蔵人の目と手で管理されています。

麦は芋に比べて香味が繊細な分、わずかな差で仕上がりが大きく変わります。

 だからこそ神川酒造では、発酵から蒸留までの各工程で、日々の気温や原料の状態にあわせて細やかな調整を重ねています。

ここでも特徴的なのは「少仕込み」。 一釜ごとに目が届く仕込みを重ねることで、「蟻 麦」ならではの澄んだ味わいが生まれています。


まろやかで、芯がある。静かな存在感

「蟻 麦」を口に含むと、やさしい麦の香りがふわりと広がります。
ほどよく熟れた果実のようなまろやかさとコクが続き、最後に残るのは凛とした余韻。

軽やかだけど、頼りないわけではない。派手ではないけれど、存在感がある。

そんなバランスの良さが、「蟻 麦」の魅力です。たとえば、脂ののった豚の角煮や、甘辛い焼き鳥、スパイスの効いた料理と合わせても、味がぶつからず、むしろ調和します。

焼酎が前に出すぎることなく、場や料理にそっと寄り添ってくれる。「蟻 麦」には、そんな“静かな力強さ”があります。


大きな夢を、足元からかたちにする

神川酒造の焼酎づくりに、派手な演出や大きな広告はありません。でも、一釜ごとの仕込み、一滴ごとの蒸留に真剣に向き合う姿勢があります。

「蟻 麦」という名前には、大きな声を上げずとも、着実に歩みを重ねていく蔵の想いが込められています。

少しずつ、一歩ずつでも、自分のやり方で積み上げていくこと。それがやがて夢に近づく道だと、この焼酎は教えてくれるようです。

焼酎づくりに向き合う姿勢そのものが、この一本に表れていると感じました。


焼酎がそっと寄り添う時間に

「蟻 麦」は、飲み方によって表情を変えてくれます。

  • ロック:しっかりした骨格と香りをそのまま楽しむ
  • 水割り:麦の甘みと爽やかさが引き立つ
  • お湯割り:香ばしさとまろやかさがじんわりと広がる

どの飲み方でも、焼酎が出しゃばらず、日常に寄り添ってくれる。

考えごとをしたい夜や、少し気持ちを整えたいとき。 そんなとき、そっと手を伸ばせるような安心感があります。


「また飲みたいな」と思える焼酎

麦焼酎が好きでいろいろな銘柄を試してきましたが、
「蟻 麦」はその中でも記憶に残る一本でした。

飲んだ瞬間に感動があるというより、
飲み終わったあとに「また飲みたいな」と思う。
それが何よりの証拠だと思います。

派手ではないけれど、確かな重みがある。
そんな焼酎に出会えること自体が、
どこか背筋を正してくれるような気さえしてくるのです。

「蟻 麦」が語るのは、大きな夢の実現ではありません。
毎日の中で、足元を見つめて、少しずつ進んでいくこと。
それを積み重ねることこそが、本当の強さなのだと教えてくれるのだと思います。

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 茨城県ひたちなか市で1910年(明治43年)の創業以来、110年以上の歴史を刻む老舗酒店です。
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